![]()
【都市と地方 子育ては格差か?】
■広島(地方)の現場 支援の種類も量も圧倒的に少ない
広島市で認可保育園、ベビーシッター、各種保育事業を展開する、(株)くうねあ(安佐南区祇園四−七−三)」堀江宗巨社長は、京都・東京・広島と子育て環境を自身で経験。最近は東京、海外の保育事情にも触れる機会を設け、各所の事情に精通しており、こう話す。
広島(地方)は支援サービスの種類も量も、東京と比較して圧倒的に少ない。東京はコンパクトに公的機関、公園や各施設が密集しているが、地方は自動車がないと移動もままならない。
病児保育(子どもが病気になった際に預かるサービス)も、かつては広島市内にほとんどなかった(現在13カ所・利用は1日2000円)。今は整備が進んだとはいえ、広島市は有料。福岡市は無償化している。自治体によって同じ子どもへの対応がここまで違う(ただし、広島市含め、各地で支援拡充は進んでいる)。
地方への転勤族の声はシビアだ。「授業料も医療費も給食も、東京ではお金がかからなかったのに」。住居費や通勤費が安くなったとはいえ、自動車社会でその費用も嵩むため「なんだか釈然としない」感覚は、支援の「見える化」が進んだ時代ならではの反応かもしれない。
■学習・就労環境も子育てに大きく絡む
仮に、考えうる限りの子育て支援策が地方自治体でどうにか実現できたとしよう。新たに移り住む人も、以前から定住している住民も、さあここから−。
子育ての時間軸は家庭で異なるが、決して短くはない。子どもが育つ場所は子どもが学ぶ場所であり、親が働く場所でもある。となれば、「子育て支援策」だけで定住の判断が下るわけではない。
本誌5月号では「職住近接でひとり親採用」と題した特集記事で、広島市の「ひとり親おしごとLINE」制度を取り上げた。厳密には子育て支援策ではないが、「子育て中のひとり親の仕事を応援する」というメッセージが明確に伝わってくる。こうした仕組みの工夫こそが、予算面で苦労する自治体でも勝負できる武器になるはず。
広島県議会の畑石顕司議員は、教育環境の視点からこう指摘する。現在、各自治体が繰り広げる子育て支援策は、隣町との引っ張り合いの様相を呈している。どこかの自治体が秀でた支援を打ち出せば、「隣の町に住もうか」という話に。自治体同士がサービスを競うこと自体は悪いことではないが、全国で起きている根本的な少子化対策には必ずしも繋がらない。また、補助金などの支援をもらえるに越したことはないが、それだけでは本質的な解決にはならない。
教育格差もまた、子育て負担に直結する。学習塾・習い事の費用はその典型。労働生産年齢人口が多かった時代は、大学進学推進の空気が社会全体を覆っていた。しかし人口減少社会においては、その前提から見直す必要がある。さらに、公立高校再編が進む一方で、世の中の意識はすぐには変わらない。廃校に反対する声が上がるのはその表れ。
畑石議員が注目するのはフィンランドの取り組み。子どもが小さいうちから興味・関心を丁寧に聞き出し、仕事体験を通じて得手不得手を見極めていく。勉強に打ち込む道もあれば、手に職をつける道もある。
例えば、専門高校(工業・商業・農業・水産など)を公立が担い、私立無償化で普通科は私学へと住み分けを図るという発想も一考に値する。
転職がスタンダードの時代に対応したリスキリング(職業訓練)の拡充も急務。こうした分かりやすい施策に早く手を打つことが、子育て環境の整備ともリンクしてくる。
続きは誌面で